指揮官インタビュー第四回:Edda Ghost(Mana)

イラスト:めいあん

「★斉射!」「向こうに……どうしようかなあ」

第四回目の初心者向け指揮官インタビューは、ManaDC(Chocobo)双蛇党に所属するEdda ghost氏だ。

Edda氏と戦場を同じくすると、アライアンスチャットが賑やかになることが多い。戦況を見つつも、単独で指示を出すというより23人を巻き込みつつ動いていき、24人レイドにも似た雰囲気を作り出す。初めて間もない参加者にとっても、とっつきやすい戦場にしてくれるのではないだろうか。
今回のインタビューでは、一字一句悩みつつ丁寧に述べていく姿が印象的であった。アヴィールのヘルムのように、小さいながらみっしり詰まった中身を楽しんでいただければ幸いだ。

 

↑Edda氏のFL記事。基本的な事から記述されている。

以下略語、制圧=外縁遺跡群(制圧戦)、シルロ=シールロック(争奪戦)、FOG・氷=フィールド・オブ・グローリー(砕氷戦)、OP=アウトポスト、スタート地点。

 

───ではよろしくお願いします!今回のテーマとしては、初心者さん向けということで、よろしくお願いします

「よろしくおねがいしますー。」


↑Edda氏…いる

───では…最初に。エッダさんが14のPvPを始めたのはいつごろでしょうか

「元々フロントラインを始めたのはシールロック時代ですね。初めてのMMORPGがUltimaOnlineだったので、(PK・MPKというか)PvPには元々抵抗がなかったというのもあります。そのあとのRagnarokOnlineでも気が付いたらGvGやってました。」

───PvPゲーム!だと土壌はできていたという感じですね。ウルヴズやジェイルはされてなかったんですか?

「ちょうどエキスパルレに飽きてきた頃で、どうやってトークンを溜めようか悩んでいたら、「あ、なんかフロントラインっていうのがあるじゃん、いってみようかな」と、軽い気持ちで。それまでウルヴズやジェイルといったPvPには全く触れていませんでしたねー。
2014年6月18日、パッチ2.2でエオルゼアに降り立ったようです。ただLv50になったのはちょうど一ヶ月後の7月18日みたいなので、実質パッチ2.3からという感じですね。」

───ほう!

「当時のエキスパがタムタラハードだったんですよね。それで周回しているうちに、いつの間にか元キャラのエレゼンからエッダちゃんに……。」

───乗り移られた…のでは…

「そこに気付いてしまいましたか……。」

 


 

───シールロックから始められて。指揮というか…アラチャを始められたのはいつごろからでしょうか?ある程度慣れた頃からとは思われるのですが・・・

「これは昔のmana事情が少し絡んでくるんですが、当時の双蛇党は弱かったのと、軍師さんが少なかったんですね。
なので軍師さんがいない試合では、常連さんたちが声を出し合うという文化というか土壌が既にできあがっていました。
その中でI鯖にRさんっていうとても上手い軍師さんがいまして、そのかたの指揮を見習うというか「このケースだったらこういう指示が出るかな?」と予想を繰り返していって、的中率が高くなったところで自分も声を出しはじめて、最終的に指揮もするようになった、という感じですね。」

───これまで伺った方々と違って新鮮です

「あとはちょうど時を同じくして、チョコボ鯖の双蛇党にフロントラインLSが出来たので、仲間内で相談や研究したり共同指揮したりもしてました。」

───その頃は今のような鯖間募集もありませんし、LSでの連帯が主でしたね。

「ですねー。常連というかいつも戦場にいる印象深い人を集めてLSが生まれた感じでした。」

───野良の方に声をかけてというような?

「そうですね、試合前後にコミュニケーションがとれるひとを重点的に、ちまちまと勧誘していった記憶があります。」

───お、MMOっぽい。シールロック、制圧、氷の中で一番お好きなシステムはなんですか?

「一番好きなのはシールロックですねー。最後の最後まで大逆転の可能性があるのと、リスの湧きが完全にランダムなので、状況によってはさっきまで攻撃側だったのが今この瞬間から一転して守備側にチェンジする、という攻守交替が醍醐味だと思います。実装から長いこと経つのに、いまでも新しい戦術が生まれていますからね……。
二番目は制圧戦ですね。ドローン&システムというボーナス得点の要素はありますが、基本的には戦線の押し上げとキルに集中できるので。指揮する場合でも、反対側の見えない戦場を予想して動くしかないので、そのあたりの駆け引きが楽しいです。
あと……砕氷戦は確率ゲーム、8分の全湧きが終わっても決着付かなかったら裏読みゲーム。個人的にはもうちょっとマップを狭くしたほうが、より戦線が流動的になってもっと面白くなると思うんですけどね……。」

───シルロは…たまに運ゲーと言われることがあると思うのですが…

「シールロックは──これは私じゃなくて同じ鯖のVさんという軍師仲間の言葉なんですが──「オセロゲーム」という表現があっているような気がしています。
優勢な位置を取りながら敵を挟みつつ、高台(オセロでいうところの四隅)が取れる時は確実に取る。また、リスを取っても(オセロでいうところの石を置いても)すぐにひっくり返されるような場所には行かない(置かない)。
状況に応じて取捨選択と即断即決を繰り返していかなければならないので、指揮をする側としては一番難易度が高いコンテンツかもしれません。」


↑シールロック、通称「中央高台」。攻め辛く防衛しやすい。取れると非常に有利。

───なるほど!難しいコンテンツの楽しみ方があると

「おそらく予測の困難なコンテンツが好きなんだと思います。PvEでもディープダンジョンとか大好きなので。
制圧戦は2回目のドローンが終わった時点、すなわち残り15分頃になると敵味方おおよその情勢が分かってくるので、その時点で指揮が必要か否かを判断しています。左翼も右翼も優勢であれば特に指揮の必要はないのでそのまま無言で押していきますし、逆に両翼とも劣勢の場合は「いったん10時を捨てて2時に全軍突撃しよう」と提案する場合もあります。
よく知った常連仲間が他アラにいれば、20人の本隊と4人の分隊に分けて「本隊は2時方向へ突撃、分隊は10時方向で牽制だけお願い」と細かく指示を出す場合もありますが、ドローンの湧き時間ごとに両軍の配置を入れ替えたり、味方にその意図を説明しなければならないので、そういう試合の時は終わった後でへろへろになっています。考えるのは好きなので楽しいんですけどね。」


↑制圧戦。外周に6つある「陣」を維持・奪還しながら、中央高台(画像)のドローンを破壊する。

「話が逸れましたが、制圧戦はいかにして敵側の戦力不均衡を作り出すか(そして弱いところを集中的に叩くか)という「シーソーゲーム」だと思います。
砕氷戦は「詰め将棋」のようなもので、時間湧きのパターンが決まっていて、残りの大氷の位置と現在順位によってどう動けばいいのかも概ね決まってくるので、指揮としては一番楽かもしれません。歩兵としても退路だけ確認しておけば、あとは余計な事を考えずにひたすら火力を出すだけなので、はじめてPvPをやるプレイヤーにとっては一番馴染みやすいとは思います。
ただ個人的には、「この状況だったら裏から回って部屋に入るしかないよなぁ」とか「8分の大氷が終わったあと両方から攻められるなぁ」もしくは「最後の小氷4つ割れば280点プラス、残り40点になるから拠点で粘れば勝てるなぁ」といった感じで先の展開が一番読みやすく、予想外の流れになることが少ないので、やや面白みに欠けると感じることはありますね……。」

───フロントラインは、24人の戦略ゲームが醍醐味ですねえ。ただ、マナの戦場に行った時に感じたのは非常に殺意が高くて、そのまま押し切る熱意が高いというか…

「個人的な推測ですが、おそらくそれは過去のmanaのフロントライン事情も絡んでくるかもしれません。昔話になりますが、週間64戦64勝を成し遂げた強固定がとあるGCにいまして、その頃に全GCを巻き込んだ常時キル合戦の日々が続いたんですね。もしかするとそのあたりからmana戦場の殺意レベルが高くなった可能性はありますね。」

───なるほど……ちなみに、普段はPTで参戦されているのでしょうか?

「自分の固定は敢えて作っていないのもあって、ソロ・身内でのライトパーティ・野良募集でのフルパ申請を、まんべんなくローテーションしている感じですね。
なるべく偏らないように平均化しているつもりですが、比率としては身内での4人~5人での申請がやや多いかもしれません。

一時期、他の固定にお邪魔していたこともあるので、固定としての楽しさも知っているつもりです。ベテランばかりで構成すれば、勝率5割以上をキープすることもできます。
ただ私の場合は、毎日違う人と組んでいったほうが楽しく感じるというか、いろいろな人と交流したいという気持ちのほうが強いのかもしれませんね。なので非常勤軍師というか、指揮を執るか否かも割とケースバイケースだったりします。」

───ケースバイケースの指揮をするにはやはり大変と思うのですが…特に気にかけていることなどはありますか?

「最終的には勝つことが目的であるのは他の軍師さんと共通なんですが、私の場合はそのために「自分達が獅子奮迅の働きをする」のではなく「味方全体を底上げする」ことを手段として捉えているのが、他の軍師さんと比べて異端というか違う所かもしれません。
ですので、できるかぎり味方を褒めるようにしています。高揚の有無やキル数ではなく、ベストなタイミングで逆転のチャンスを作った味方や、上手いことスニークして無傷でリスを取ってきた味方をアラチャで賞賛することが多いですね。PvPってどんなゲームでもギスギスしやすいコンテンツではあるので、チャットぐらい和気藹々と行こうよ、と。
勝利経験も大切ですが、褒めて育てることが継続したモチベーションに繋がっていくと考えています。」

───ありがとうございます。

 


 

───では最後に、これから指揮をしてみようという初心者さんに対して、何かコメントなど頂けますでしょうか。

「「逃げ腰でも良いので、まずはとにかく生き残る。」

これは勝ち試合でも負け試合でも、どうしてそうなったのかを知るためには長く現場に留まってその目で結末を見届ける必要があるからです。戦闘不能でスタート地点に戻されて、そこから再び駆けつけた時にはだいたい戦闘は終わっているので、「どういう流れで決着が付いたのか」が分からないままとなってしまいます。これは軍師の経験値として考えた場合にプラスになりません。とにかく生き残り、どうやって敵を追い返すことに成功したのか、あるいはどこで失敗して押し戻されたのか、ひとつずつ事例を経験として積み重ねていく必要があると考えます。」

───経験値、というやつですね。リアル経験値…

「「勝ち目のない場所には行かない」

よく制圧戦などで遭遇するケースが多いと思うのですが、味方が分散して敵に押されている場面では、援軍が一人や二人増えたところで焼け石に水にしかならないケースがほとんどです。そういう時は、勝ち目のない戦場は一時放棄して、自軍が優勢となれる・あるいは第三陣営と挟撃できる地点を見つけ出すことです。それでもまだ火力差が大きすぎる時は、積極的な交戦を放棄してデスを減らす+逃げ回りながらコツコツとリスを盗むなど、別の方法で点数を稼ぐ戦術に切り替えることも必要です。」

───対面で戦うだけがフロントラインではないということですねえ

「「最初から上手い人なんかいない」

指揮をしたからといって、最初から上手くいくとは思わないことです。少なくとも軍師不在の無言試合より、いい動きができていれば確実に勝利へと近づいているはずです。急がば回れという言葉がある通り、勝って負けても一喜一憂せず、一戦一戦を自らの糧としていくことが大切だと思います。」

───ありがとうございます。では…今度は戦場で!

「はい、死者の宮殿でお会いしましょう!」

 


(2018/7/26)